イカの泳ぎ方や速度について
テレビ番組などで、何かに驚いたイカが墨を吐きながら体をピンと伸ばし、猛スピードで泳ぎ去って行く様子を見かけることがありますが、イカはどうして、あのように速く泳ぐことができるのでしょうか。ここでは、イカの泳ぎ方やその速度についてお話をしたいと思います。
イカが泳ぐしくみ
ざっくりと言うと、空気と海水の違いはありますが、膨らませた風船が空気を噴出しながら飛んでいくのと少し似ています。ただ、風船の場合は空気が入る口と出る口は同じですが、イカの場合は、海水を吸い込むところと噴出するところは別になっています。
イカは、頭と外套膜(がいとうまく)の隙間から海水を吸い込み、外套膜をポンプのように収縮させて漏斗(ろうと。じょうご、とも読みます。
ビンのような口径の狭い容器に液体を注ぐときなどに使う道具です)状の口から吐き出すことにより得られる推進力で泳いでいます。
イカの頭というのは、ちょうど目のついているあたりで、その上にある円錐状の部分は胴体であって頭ではありません。クリスマスになると、頭の上にトンガリ帽子を被ったりしますが、トンガリ帽子にあたる部分が胴体になるという、かなり変わった体形をしているのです。
サイズが大きめでぶかぶかなトンガリ帽子のような傘と頭の隙間から海水を吸い込み、その海水を筋肉でできたポンプで押し出して、漏斗に似た口から勢いよく海水を吐き出している様子を思い浮かべていただければ、少しはわかりやすいかと思います。
外套膜というのは、イカの胴体の表面を覆う筋肉質の膜のことです。皆さんがイカ刺しなどで食べているのは、主にこの外套膜の部分です。イカが進行方向を変えるときは、漏斗状の噴出口の向きを変えることにより行います。この噴出口は、泳ぐための推進力を得るほか、糞を出したり墨を吐いたりする場合にも使われますが、食べるための口は別にあります。
余談になりますが、イカにも背と腹があって、この噴出口がついている方がイカの腹側になります。
遊泳速度
国立国会図書館の『リサーチ・ナビ』に掲載されている「魚の泳ぐ速度(遊泳速度)」によると、イカの絶対最大遊泳速度は、時速41kmと記載されています。あいにく、イカの種類や絶対最大遊泳速度の定義は明記されていません。
絶対最大遊泳速度というのは、おそらくは瞬間的に発することができる速度(瞬発速度)のことを指し、ある程度の長い距離を時速41kmで泳ぎ続けられるわけではなさそうです。ちなみに、瞬発速度と持続速度とは2~3倍程度の差があるとも言われているようです。
普段、何気なく食べているイカの体には、瞬間的にではあれ、人が走るスピード(100mを10秒で走っても時速36km)よりも速く泳ぐことができる爆発的な力が秘められているのですね。
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