謎多きうなぎの生態

謎多きうなぎの生態

生態に謎が多い動物であるが故に餌や飼育環境を整えるのが難しく、完全養殖の実用化は難航しています。今回はそんな謎多きウナギの生態について現在わかっている情報をまとめました。

 

海で育ち川で成魚になる回遊魚

ウナギは、生まれた場所を知っておりどんな離れていても生まれた場所には戻ってくる方向感覚の優れた回遊魚で、海で生まれ、回遊しながら稚魚になり、川で成魚になります。また、産卵のため海へ戻る習性があります。

 

実は絶滅危惧種

庶民がウナギといえば『ニッホンウナギ』即ち天然のウナギを指します。『ニッホンウナギ』は、2013年発表のレッドリスト『絶滅の恐れがある種』に翌年には国際自然保護連合(IUCN)にも指定されています。その原因は、個体数の減少と乱獲漁にあると言われています。ウナギのような回遊魚は、エルニーニョ現象のような海流変化に弱く、レプトケファルス(仔魚)の状態で正しい海流に乗れなかったらそのまま死滅してしまう恐れもあります。水質汚染や護岸工事による環境の変化も受けやすく、餌が取れなくなった成魚のウナギも個体数そのものが減ってしまうわけです。絶滅危惧となった一因でもあります。

 

 

幼生(仔魚)はレプトケファルス、稚魚はシラスウナギ

卵が孵化したばかりのウナギの幼生は「レプトケファルス」。それが変態し回遊している時の稚魚は『シラスウナギ』と呼ばれます。日本のウナギの産地・鹿児島や宮崎、高知、静岡といった川へ登ってくるわけです。海から川へ登ってくると、“黄ウナギ”と呼ばれる腹が黄白色のウナギになり、そのウナギが、川や湖といった淡水の所で、5?10年すると全体が黒ずみ、腹が銀色になり、これが我々が食べている“銀ウナギ”と呼ばれるものになります。

 

最近になって産卵場所が判明

2009年、日本の東京大学大気海洋研究所塚本勝巳教授を中心にした調査チームが発表したものによると、日本から2000㎞離れた、太平洋マリアナ海域、ちょうどグァムやサイパンあたりが産卵場所ということがわかりました。そこで卵が孵化したウナギの子供は、レプトケファルスの状態で、太平洋を北赤道海流に乗って成長しながら回遊し稚魚になって日本をはじめ、東アジアの海域へ向かってきます。産卵場所がわかっても『どうやって東アジアまでたどり着くのか?』『なぜ海で生まれたのに河川で育つのか?』『どうして親ウナギはまた河川から海の産卵場所へ戻るのか?』など新たな謎も生まれています。

 

 

養殖ウナギは稚魚から育てたものがほとんど

レプトケファルスにはまだ未解明な部分が多い為、養殖ウナギといったら、それはほとんどはシラスウナギから育てたものです。稚魚である『シラスウナギ』まで成長していれば、生命力の強いウナギは比較的簡単に養殖も可能で、天然のウナギが5年以上かけて成長するのに対して、人の手で餌を与えられ十分な栄養を取った養殖ウナギは2年前後で大きくなります。市場に流通している大半の養殖ウナギは、卵からウナギを返すのではなく、稚魚と呼ばれる『シラスウナギ』を捕獲して餌を与え十分に栄養を取らせています。

 

天然ウナギは雑食

天然の成長したウナギは、淡水と汽水(河口付近や海とつながる湖沼で淡水と海水が混じりあった塩分濃度がちょうど中間のところ)の海域を環境に応じて、雑食かつ肉食のウナギは、カニやエビ、小魚などの餌を食べ成長しています。

 

レプトケファルスの餌はマリンスノー?

ウナギの完全養殖が難航の最大の理由はレプトケファルスの餌がわからないことでした。餌がわからなければ養殖なんてできるはずがありません。しかし最近の研究でレプトケファルスの餌はマリンスノーと呼ばれるプランクトンの排泄物や死骸ということが判明。・・・朗報のように聞こえますが、どっちみち餌がわかっても実際にそれを生簀の中で再現する為には、産卵場所の現場海域で採取した餌を稚魚に与えなければなりません。しかしそれはコスト面からも難しく、マリンスノーに代わる餌を試行錯誤の研究を重ねた結果、サメの卵を使用した餌がよいということがわかりました。その鮫の餌で2010年水産総合研究センター増殖研究所の研究チームが世界初の鰻の完全養殖化に成功したものの、まだまだコストが馬鹿にならず、市場に流通するまでにはいたっていないのです。

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