タラバガニはヤドカリの仲間なの?
「タラバガニは、カニの仲間ではなくヤドカリの仲間」というお話を耳にしたことはありませんか?
「でも、見たところ貝殻も背負っていないようだし・・・。」とお思いのあなたに、ここではタラバガニはヤドカリの仲間なのかどうかについて、お話したいと思います。
カニとヤドカリの違い
まず、カニとヤドカリの違いを整理しておきましょう。
動物の分類学上、カニもヤドカリも、節足動物の十脚甲殻類に分類されます。
頭と胸が甲殻で覆われていて、ハサミのついた脚(「鋏脚」(かんきゃく)と言います)と歩行などするための脚が計10本ある点などは共通しています。
ただ、カニは十脚甲殻類のうちの短尾類(たんびるい)に分類されるのに対して、ヤドカリは異尾類(いびるい)に分類されます。
短尾類は、腹部が退化して腹側に折りたたまれていることから、このように呼ばれています。
十脚甲殻類のうちの長尾類に分類されるエビの姿を思い浮かべると、お腹が極端に短くなって折りたたまれているのがカニの姿なのだというイメージを持つことができるかと思います。
異尾類は、腹部がねじれて左右が不相称(「相称」(そうしょう)というのは生物学の用語で、「生物の個体または器官が、ある軸や面で互いに同等な部分に区切られること」(『大辞林』初版1998年発行、三省堂)になっていることから、このように呼ばれています。
ヤドカリを貝殻から取り出してみると、腹部は柔らかく、右にねじれていて、目立つ節がありません。
また、ヤドカリの多くには、腹部の左側にのみ、「腹肢」と呼ばれる付属の肢があります(カニにも腹肢はありますが、左右相称です)。
タラバガニは異尾類に含まれる
タラバガニは、外形はカニに似ていますが、実はカニの仲間ではありません。
貝殻は背負っていないものの、ヤドカリの仲間になります。
それは、タラバガニには、次に記載するようなヤドカリ固有の特徴がみられるからです。
- カニは腹部が左右相称なのに対して、タラバガニのメスは、腹部が右にねじれて左右不相称です(オスは左右相称です)。
- タラバガニの第1歩脚(左右とも、目のついている側から数えて第1歩脚~第5歩脚と呼びます)にあたる鋏脚のハサミは、右が左よりも大きくなっています。また、第5歩脚はごく小さく、「鰓室」(さいしつ)というエラが収められた場所にしまわれていて見えにくくなっています。タラバガニが6本脚と誤解されやすいのは、ハサミが目立つ鋏脚と見えにくい第5歩脚以外の6本の脚に目が行きやすいためです。
- 腹部の左側にのみ、腹肢があります。
- カニは、一般的には横方向に移動しますが、タラバガニは、縦方向にも移動することができます。
カニと名がつくようになったのは、おそらくは、タラバガニの見た目がカニに似ていることによるのでしょう。でも、宿無しでもヤドカリというのは、ちょっと面白いですね。
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