ズワイガニの「ズワイ」の由来とは?
ズワイガニのズワイは少し不思議な語感の言葉ですが、このズワイという言葉にはどのような意味があって、どうして蟹の名に冠せられるようになったのでしょうか。ここでは、ズワイガニの「ズワイ」の由来についてお話したいと思います。
いつ頃どうしてズワイガニと呼ぶようになったのか
いつ頃からズワイガニという名で呼ぶようになったかは、今でもはっきりわかっていません。
ただ、文献を過去にさかのぼってみると、越前国(現在の福井県北東部)の特産品が記載された『越前国福井領産物』(1724年)には「ずわいかに」の名が出て来ますので、少なくとも江戸時代中期には、すでにこの名で呼ばれていたことがわかります。
どうしてズワイガニと呼ぶようになったかについては、この産物帳には記述がなく、また、他の文献にも今のところ記載は見当たらないようです。
そのためか、現状ではいろいろな説があります。
ズワイガニの名の由来に関する諸説
1)楚(すわえ)蟹が訛ったものとする説
現在、最も広く知られているのは、この説のようです。ズワイガニは、漢字で「楚蟹」と書くことがあります。
「楚」(すわえ)というのは、昔使われていた言葉で、「木の幹や枝から伸びた、細くまっすぐな若い枝」という意味です。
一例をあげると、鎌倉時代の軍記物語である『源平盛衰記』には「梅のすわえに巻数付て、各捧て六人の大将軍に奉る」(=梅の細くまっすぐな若い枝に巻数(かんじゅ。僧侶などが読誦した経典や陀羅尼の数を記録した文書)を付けて捧げ持ち、六人の大将軍に差し上げる)という記述が出て来ます。
ズワイガニの足を見ると、細くまっすぐに伸びています。
この足を細くまっすぐな若い枝に見立てて楚蟹(すわえ・かに)と呼ぶようになり、この「楚」が後の世に「ずわえ」と読まれるようになり、さらにそれが訛って「ずわい」がにになったとする説です。
2)ズワイガニのズは「頭」(かしら)を意味するとする説
「頭」には、長や首領といった意味があり、音読みでは「ズ」とも読みます。ズワイガニは蟹の頂点に君臨する”蟹の頭”であるという意味を込めて、ズワイガニと呼ぶようになったとする説です。
3)酢(す)で和(あ)えて食べる”すあえ”が転じたとする説
ズワイガニは、今でも酢で和えて賞味されていますが、この酢で和える「すあえ」が「ずあえ」に転じ、さらに「ずわい」に転じて、ズワイガニと呼ぶようになったとする説です。
4)体の大きさのわりに頭が小さいからズワイ(頭矮)になったとする説
ズワイガニの姿を見ると、細くて長い足のある体の大きさのわりに頭が小さく見えなくもありませんが、この点をとらえて、頭(ず)が矮小(わいしょう。ちっぽけであること)なことから、ズワイガニと呼ぶようになったとする説です。
こうしてみると、どの説にもなるほどと思わせる点はあります。現状では本当のところはわかりませんが、いつか古文書などからヒントとなる記述が見つかるかもしれませんね。
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